日本評価学会春季第3回全国大会

共通論題の概要をご紹介!

 

共通論題セッションI
 エビデンスに基づく政策立案の普及に向けて

座長:佐々木亮(ウェスタンミシガン大学)
 司会:津富宏(静岡県立大学)
 指定討論者:山内康一(自由民主党衆議院議員)
塚本壽雄(早稲田大学)

「エビデンスに基づく政策立案」が、世界的に大きな流れになっている。
過去50年間にわたり、医学分野においては、科学的に厳密なエビデンスに基づいた政策立案により、世界の保健状況に関して大きな進展が見られたとされる。同様に他の分野においても、確かに効果があると証明された政策介入の評価事例を産出し、それを収集して体系的に分析し、その分析結果が広く利用されるような方策を政府がとれば、医学を変えたように社会分野においても急速な進展が見られる可能性がある。
本セッションでは、医療、刑事司法、教育、ODAの分野における、エビデンスの活用状況についての検証を行い、その検証結果を踏まえて、エビデンスに基づく政策立案の日本における普及の可能性について議論する。

   

共通論題セッションII
 評価の国際化

座長:廣野良吉(政策研究大学院大学)

【概要】
 明治維新以来、わが国の近代化過程は正に先進諸国からの進んだ工業機械の輸入や産業技術の導入をはじめとする多くの経済制度、法制度、行政制度、軍組織等の導入と、「和魂洋才」という言葉が示すように、これら諸制度の導入後のわが国の伝統、社会・文化的環境への適応過程であった。戦後における行政評価制度、企業人事評価制度、技術評価制度の近代化も、戦前の近代化過程と同様である。このような近代化過程はわが国のみならず、諸外国でも同様であり、正に「近代化即国際化」過程であった。戦前と戦後の近代化過程の相違は、前者が二国間交流に限定されていたのに対して、後者では二国間交流以外に、国際機関がそのブローカー的役割を果たしている点であろう。さらに今日の「グローバリゼーション」の下では、いずれの国でも、近年この「国際化」過程が双方通行になりつつあることも注目したい。
本セッションでは、地方自治体、中央政府における評価制度の導入・合理化で諸外国との交流が果たした役割を、それぞれ練馬区の島添悟亭氏と総務省の平井文三氏に討議していただく。さらに、先進諸国のODA供与における学習・調整機関として近年ODA・開発評価手法・制度の改善・改革に意欲を燃やしているOECD/DAC開発評価ネットワークの動きを、その副議長である国際協力機構の三輪徳子氏に開陳していただき、それを受けた形でODA受入国であるバングラデッシュが、その開発評価制度の近代化過程で、国際的な支援国・機関の「支援」をどのように「内部化」してきたかを、つい最近バングラデッシュ勤務から帰国した外務省の紀谷昌彦氏に説いていただく。最後に国際協力銀行で長年にわたって評価に従事してきた鴫谷哲氏に、わが国の円借款供与機関である同行が、そのODA評価の「国際化」に如何に取り組んでいるかをお話していただき、参加者皆さんとの率直な意見交流に期待したい。

 

共通論題セッションIII
 評価手法の標準化・政策体系の理論と実践

座長:山谷清志(同志社大学)

 日本評価学会のメンバー有志は故・古川俊一教授を中心に2005年春に政策評価・行政評価の手法の標準化を進める「評価手法標準化の分科会」を立ち上げ、同年5月21日理事会で承認された。古川教授の手になる設立趣旨の概要は以下のとおりである。
「評価の手法には、社会科学的接近、数理的接近、業績測定などが混在し、かつそれぞれについても、数種類あるため、実務上的確に使い分けていくことはむずかしい。特に、制度化が進んできた政策評価、行政評価において、目的に応じた標準的な手法を明らかにする必要性が実務家から痛切に訴えられている。これまで評価学会において個別に議論がなされてきたが、理論上も完全に整理されているとはいえない。この際、評価学会の会員の協働により、各種の評価手法の標準化及びその活用のありかたについての検討を進めるべき段階にきているものと認める。実際に評価の業務に関わった経験を持つ理論家、実務家の貢献により、比較的短期間に議論を集約し、アウトプットを出す。」
本セッションはこのような古川教授の御遺志を継ぎ、政策評価の標準的な手法の可能性を探ろうとするものである。
さて、政策評価の実務における問題意識は、国の政策評価の基本方針の改訂(2005年12月16日閣議決定)の中に明確である。ここでは、@政策評価の実施に際してはあらかじめ「政策体系」を明らかにしておくこと、A政策の特性等に応じて合目的的に「事業評価方式」「実績評価方式」「総合評価方式」やこれらの主要な要素を組み合わせた一貫した仕組みなど適切な方式を用いること、Bさらに複数行政機関に関係する政策(上位目的)と関連する場合は複数行政機関に関係する政策との関係をあらかじめ明らかにするように指示している。おそらくは、各府省の政策評価が政策体系の視点を欠いたまま事業評価の方式に終始することが多いという事情、評価担当職員が各行政機関の内部事情によって(消去法で)安易に方式を選択している現実が見えたからであろう。
標準化推進小委員会で行われたこれまでの議論でも、いくつかの課題が指摘されてきた。たとえば数学的・統計学的な初歩的誤りが評価指標や達成度評価の機能を損なっている、指標が妥当性を欠く、データの尺度・標本調査の誤差や偏り、比率の形をとる指標を規準化(標準化)できないといった欠陥である。また、政策評価の活用という視点からみると国、都道府県、市町村で行われている政策評価については、それぞれに方式・方法の違いから出てくる不具合が観察され、それらを矯正するため優良評価事例を実施レベルとして標準化できないかという前向きな提案も出ていた。
こうした議論や指摘を反映して出てきたのが、評価には政策体系の策定と評価そのものの品質の維持管理が不可欠であるという、非常に常識的であるが難しい意見である。その際考えるべきであるのは、@評価の方法論の共通性と相違性(理論的なもの)、A中央政府・地方それぞれの評価の実務の共通点あるいは相違点、B政策体系の実際と問題点、C政策評価と独立行政法人評価の関係、D政策評価の体系と組織や人事の評価への応用、などであろう。
この春季第3回全国大会では、国の政策評価の改訂を契機として、政策評価の可能性を評価手法の標準化と政策体系という二つの切り口を基にして、組織横断的に検討したいと考えている。

共通論題セッションIV
 評価と市民社会

座長:入山映(立教大学)・石田洋子(国際開発センター)

 市民社会はパブリック・セクターとならんで市場経済メカニズムの外で機能する。それゆえに「評価」を必要とするという点では後者と選ぶところはない。しかし自薦組織に過ぎない市民社会は、パブリック・セクターが当然保有すると推定を受ける「正統性」を自ら立証せねばならぬ他、活動資源の調達に手一杯で自ら「評価」を行う余裕に乏しいという泣き所もある。さらに市民社会の規模が国民国家を超えて国際的な広がりを持ち、ために国際機関と関係を持つに至ると、「誰のための」評価か、という問題を巡って独特の問題も発生する。これらの問題群は単なる評価技法の問題を超えて、市民社会のあり方そのものに対する問いかけを含意する。
問いかけの内容が本質的なものであるだけに、合意を見ている直裁な回答は存在していない。というより、性急な規範的(normative)言明はかえって問題の所在についての認識を曇らせるというべきであろう。従ってこのセッションでは、三つの側面から問題の現状を把握し、提示することを心がける。まず南里・岡本氏には「正統性」のよりどころとしてのアカウンタビリティについて、理論的把握の試み及びその問題点を概観して頂く。枝木氏には評価を行うに当たっての資源問題について、市民社会がいかなる状況にあるのかの報告をお願いした。そして鈴木氏には、国際機関が関与するプロジェクトについて、現場においてはどのような評価を巡る問題が存在するかを実証的に観察して頂く。
これらの報告から、性急な最適解を求めることは本セッションの目的ではない。むしろそれらの事実に立脚して、評価文化に何が求められ、何から着手されてゆけばよいのかについての認識を共有する場となることをこそ期待している。